空を見上げればいわし雲。
耳に届く音も蝉から秋虫の声に。
秋になると恋しくなるには秋刀魚。
名前に秋がつくくらい、王道の秋の味覚。
焼くだけでも美味しく食べることができる秋刀魚は、昔から庶民の味覚。秋の始まりに感じる夏の疲れも「秋刀魚で元気」といわれるように栄養も高いことが知られている。
昔はバケツ1杯100円という時代もあったというが、
今年の秋刀魚は様様にて。
初物として出たときにゃあ〜目の玉飛び出る値段にひっくり返った。
初物食わなきゃ、江戸っ子じゃねえといわれようが、
あの値段は手が出ない。指を加えて、猫と一緒にじいいいっと眺めていたのも事実である。
他の青魚にも多く含まれているEPAとDHAが豊富で、EPAは血液をサラサラにし血栓予防してくれる。
DHAは脳に良い栄養素として有名。
脳内の細い血管にも弾力を与え、酸素や栄養素を全体に送りさらに、体内の悪玉コレステロールを減らしてくれるというありがたーい作用。
かぼすをギュっと絞れば
光る身にしゅわんしゅわんとしゅんでいった。
たっぷり餌を食べて海を泳いできたのだろう。身はしっかりとひきしまっており、脂ののりも違う。
食べ始めたら箸がとまらない。
はらわたの強い苦みがしばらくあとをひく。
これはたまらん! 酒のアテ。
身にはらわたをのっければ、秋刀魚オン秋刀魚。
塩のじゃりとした感じが歯にあたり、甘みが浮かんでくるものの後には必ず苦さがわきたつ。
身に箸いれると、骨が綺麗にとれていく。
ほくほくした身は銀シャリのように甘く、そして濃い。
パリっと焼けた皮の香ばしさがよりいっそう食欲を倍増させる。
秋刀魚のもう一つの注目すべき栄養はなんといっても良質なタンパク質だ。
アミノ酸は、体内に吸収されやすいバランスをもっており、他にも、ビタミンやカルシウム、鉄分なども豊富に含まれてる。精神安定や、血液の循環がよくなるうえに、
貧血を予防するビタミンB2も多く、他の魚の3倍以上ともいわれている。
眼精疲労やガン予防にも効くビタミンAもたくさんあるとなると、
健康オタクの日本人が秋刀魚をこよなく愛するのも本能だなあと言わざるをえない。
まあ、うまいものは栄養満点ということだ。
秋刀魚は刺身もこれまた美味である。
山葵もいいが、生姜をのっけるほうが好きである。
脂が多いので、生姜をつけすぎるとせっかくの味が消えてしまうので、
爪の先程度の量で。
生姜の香りが清涼感を与え、そのうえに甘みが立つ。
絶妙な一枚一枚の刺身が、つるんと口の中で跳ね、胃袋という海へダイブした。
長月の秋。
秋の味覚の王道、“秋刀魚”を食べずして秋を味わうことははじまらない。