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Channel: ゴン麹 酔いどれ散歩千鳥足 <野望と無謀>
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懐かしき人と出会える 秋田横手酒物語〜葉石かおりさん酒語り〜

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桜が咲き出した3月のとある日の新宿。
ホテル25FのダイニングBARで酒物語が語られた。
語り部は葉石かおりさん。
日本酒業界のみならず、幅広い酒世界に精通し、
数多くの呑み助にすばらしき酒縁をつなげてくれる人である。



葉石さんが今年から新しく活動されているのが‘酒語り’。
自ら書き下ろした日本酒に関係した物語を2時間という会の中で聞かせてくれるものだ。
今回は秋田県、横手。「秋田県横手市の地酒を味わう会」である。
阿櫻酒造、浅舞酒造、日の丸醸造、備前酒造、舞鶴酒造の純米酒が集った場所は
新宿プリンスホテルの和風ダイニング&バー“Fuga(風雅)”。
夜の帳がおり、新宿の街が輝きだした頃、会は始まった。



今回の会用に特別に用意された料理はなんとも上品でかわいらしいものばかり。
女性会ということもあるのだろう。
盛りつけも美しく、お腹がすいたとパクつくのがもったいなかった。



まず出された旬菜には
うるいとあおさ海苔の磯浸しに昆布〆胡瓜と烏賊一夜干し味噌漬けハロートニーチーズがけ
そして、のれそれレモン酢に穴子八幡焼き。

のれそれレモン酢はアテに最高だ。
これを食べるためにも、横手の酒を取りにいかねば。



まずいただいたのは浅舞酒造の『特別純米酒 美稲 ささにごり』。
これは飲みたかった。若くして旅立たれた柿崎秀衛社長への献杯もこめて……。
グラスに薄く濁った酒が注がれる。
全量純米酒、全量古式槽しぼりの蔵ならではの槽口、そのままのうすにごりは
ほのかに感じる酸で飲みやすく、白ワインを思わせる。
それでいながら余韻の幅はスマートかつ、田の横を流れる清涼な小川のように勢いがある旨味。
冷えているからだろうか。サクっと舌の上に立つ味は
どこかほろ苦いながらも春風が舞うように消えた。



横手の世界ということで用意されているテーブルには漬け物が多種にある。



中には見たこともないものもあり、思わずこれは何だ?と箸を止めてしまうものも。
名前を聞いたがすっかりど忘れしてしまったが、これは酸っぱい。
疲れた体に喝をいれてくる。



備前酒造の『純米大吟醸 生原酒 大納川』と『特別純米 生原酒 大納川』をチョイス。
特別純米の子はとにかく余韻が綺麗だ。
旨味のなかの米の味が複雑な雑味として感じる。
芳醇な香りが喉奥から立ち上り、うっとりするくらい酔い感じだ。



お刺身には 生鮪とさごち焼き霜。
あぁ、いつものgon麹なら秒殺の量であるが、今日はおしとやかに化けているので、
デカ口をおちょぼ口に。

小一時間たったとき、葉石さんの酒語りがはじまる。



横手の地を舞台にした父親と娘。親子の話だ。
小さい頃に訪れた秋田、横手の地の横手の地酒と地の味が
昔と今をつなげる世界。

主人公の記憶の思い出を聞きながら、いつのまにか主人公を自分にだぶらせていた。



大人になったら、一緒に飲もうという約束。
そう、自分の父親ともそんな約束をしていたっけ。
20歳すぎて、乾杯したのはビールくらいだっただろうか。
うすぼやけている記憶が記憶の海からうっすらと現れてくる。

阿櫻酒造の『純米吟醸 無濾過生原酒 美郷錦仕込』を口にしたとき
まるで目の前に父親がいるような感覚を覚えた。

「これ美味しいな。美味しい酒を一緒に呑めてうれしいな」
そう、父の声が聞こえた。

果実系の味がそういう記憶を呼び起こしたのだろうか。
当時、父が作りだそうとしていた果実のようなみずみずしさをもちつつ米の旨味の酒の味に似ているような気がした。

「こういうのは女の人は好きなのかな」と試験瓶の中にはいった表記のないお酒。
味見をしてくれといわれていた20歳の自分。
面倒くさくて、後で後でやるからと、その瓶を置いていった光景を思い出した。
なんであのとき、ちゃんと答えてあげなかったのだろうか。
「後で後でやるから」
この言葉ほど無情なものはない。

父が旅だってから、もう10数年か。
いまさらながら、父の存在がいかに大きかったかということをひしひしと感じる。
親子としてのあり方もそうだが、
酒業界の世界に足の小指をつっこんだくらいの生活をしている今の自分。
あの父の知識、感覚、味覚、本能がここにあったらと、いつも嘆くばかりだ。

色々な機会やご縁で様々な蔵にお邪魔するとき、
小さい頃から見覚えある器具やタンクの並ぶ貯蔵庫をみると
すぐ近くに父がいるのではないかと、つい探してしまうこともある。
同じような体格の蔵人をみたときは、思わず駆け寄りそうになることも。

『特別純米 無濾過生原酒 秋田こまち仕込』は素朴な味わいが素敵だ。
某蔵のとある銘柄を父と一杯だけ、新橋のお店で呑んだ記憶を思い出した。

ふいに笑顔がこぼれる。
そうそう、あのとき酔っぱらいのおじさんと仲良くしゃべっている父がいたんだっけ。
お酒のことになると本当に嬉しそうだった。

いつのまにか、葉石さんの酒物語は終わっていた。
横手の話を聞きつつ、父と会話も楽しめた。



筍土佐煮、ぜんまい信田巻、鰯つみれ、桜麩、木の芽。

お皿のなかに春の味が集う。
この一皿にチョイスしたのは……



舞鶴酒造の『山廃田从 生詰 20BY めんこいな仕込』と『純米吟醸 月下の舞』。



『山廃田从 生詰 20BY めんこいな仕込』は燗にしてほしいヾ(*≧∀≦)ノ゙。
燗がつくまで『純米吟醸 月下の舞』をのんびりと。

盃に口を近づけると涼やかな香りが鼻の中を通り抜けていく。
しっかりある旨味は口のなかで積み木を重ねあげていくようにひとつひとつ確かに高くなっていく。
それでいながら、後口のキレ方もいい。スパっと切れるのではなく、たなびく羽衣のようなふわりとした味の衣がゆれている。爽やかな青リンゴのような香り。何歳か若返りそうな予感。
舞鶴酒造の杜氏さんは工藤華子さんである。
蔵元の長女として生まれ育った。
「小さい頃から酒蔵が遊び場で蒸し米を食べたりしていたんですよ」と話をしてくれる華子さん。
蒸し米の香りやタンク内で発酵する醪の音があふれる蔵は小さい頃から当たり前の世界だったそうだ。

思わず笑顔になってしまう。
自分の小さいときの記憶とダブル。
彼女が醸す子は「米の旨みにこだわる」ことにはじまるらしい。
秋田県で県初&県内唯一の女性杜氏である彼女の醸すのは「田从」と「月下の舞」。あくまでも純米酒のみを造りだしている。
純米酒のみというこだわりも、様々な事情があった上で決断されたそうだ。
「長女である私が継がなければこの蔵は無くなってしまうと思ったとき、この蔵の大切さに気付きました。様々な先人が造りだし、地元の人々に支えられてきた酒という歴史を途絶えさせてはならない。飲み継がれてきたうちの蔵でしか造れない酒を造りたい」。

秋田は美人どころである。秋田美人というと男女関係なく憧れる存在だ。
工藤華子さんはまさに秋田美人。
色白というのももちろんそうだが、きちんと意思をもつ芯のしっかりとした女性。凛とした強さがある秋田美人だ。もっといろいろお話を聞きたいとおもっているとちょうど『山廃田从 生詰 20BY めんこいな仕込』の燗がついた。
徳利に手を伸ばそうとしたとき、ただよう『山廃田从 生詰 20BY めんこいな仕込』の燗の香りにノックダウンしそうになる。
ど、どぶとい香り。恐る恐る盃に注げばうっすらと黄色く色づいている。
奥深い旨みに強さのある酒。
しっかりとした米の味をさらに力強くさせているのは熟成させた年月だろう。
酸味と香りがうまく調和し、幾重にも旨味をふくらませている。
じっくりと熟成された厚みは幅をきかせながらもフッと霧が晴れるように道が開けることもある。
なんともいとおもしろき性格をもってる子だ。
もちろんどっしりとした存在感は今回、出会っている子のなかでピカ一。
どっしりしているにも関わらず、長くのんびり飲めそうだ。
熟成でさらに米の旨味に温めたキャラメルの甘味さが感じる。
燗の温度が戻ってきたら、その甘味がさらに酒の丸みを大きく広がる。
秋田県の横手という土地の雄大さを思わせるかのように。



焼物としてでてきたのは、
金目鯛柚庵焼きに蛤クリーム、タラの芽、花山椒。
蛤のクリームをひとすくいして金目鯛にかける。
金目の色鮮やかさは見た目も豪華。
蛤のエキスがたっぷりあるとろみあるクリームはふっくりした金目鯛の身の奥へと染み込んで、
香ばしさのある旨味と柔らかな甘味がうまさを倍増させてくれる。



づけ鰹と汐トマトのサラダ、新オニオンEXバージンオイルの一皿は
野菜に恋してやまないものにとっては嬉しい一皿。
それにしても本当にお上品な盛りつけ。
普段のgon麹なら「たーらーん!!!」と騒ぎそうだが、
いかんいかん。ここは新宿の高層ビルの25F。酒物語の会である。(;´∀`)…我慢我慢…



〆にいただいたのは日の丸醸造の『まんさくの花 純米吟醸 吟丸 生酒』。
『まんさくの花 純米大吟醸 首席県知事賞受賞酒』は乾杯酒としていただいた。
若き貴婦人を思わせるみめ麗しい子であった。 雑味はほぼなく、どの部分も均一に整った世界は
白銀の輝けるイメージである。透明感あふれつつも位のたかき尊き若き女性……社交界デビューしたうら若き乙女のような感じだ。

『まんさくの花 純米吟醸 吟丸 生酒』は吟醸香がほんのりたち、スマートなラインが2本。シンメトリーのように口からとびだしてくる。それはどこまでも伸びていく。酸味はそこまで感じない。それでいながら、口当たりはさっぱりとして飲みやすい。飲んだ後、口のなかにのこる余韻が初夏の木々のなかを駆け抜ける爽風のように軽やかに舞う味わい。もちろん米のもつ旨さはお行儀よく並んでいる。



〆としてでてきたのは秋田の麺! 稲庭うどん。
なにを隠そう、麺にうるさーいメンクイgon麹。
この量なら1分で消えちゃう♪ あ、いつもならのお話。
ここはお上品にいただこう。



秋田県南部の手延べ製法の干しうどん。日本三大うどんのひとつ。
稲庭うどんが誕生したのは江戸時代初期だといわれている。
小沢地区に住んでいた佐藤市兵衛という人が地元産の小麦を使い、
干しうどんや各種麺類を製造したそうだ。
その麺の味はいままでの麺と異なり、上品すぎるといわれたほど。
その技を佐藤吉左衛門が引き継ぎ、より技術改良に努めた。
この麺の噂を聞きつけた藩主がどうしても食したいという流れとなり、稲庭うどんは藩の御用を賜るまでになったといわれている。
地元の小麦粉を用いた麺とはいえ、生産量は少ない。
もちろん、一般庶民が口にすることなどほとんどない高級品だった。
そんな稲庭うどんが秋田の特産品として知られるようになったのは
明治時代以降である。
江戸時代に藩や将軍をうならした麺は宮内庁への献上品となり、数多くの賞を受賞した。
稲庭うどんは一子相伝といわれ、その技と心は稲庭の里で今も脈々と受け継がれている。

稲庭うどんを食べ歩きしたいなああε = ε = ε = ヾ( 〃∇〃)人( 〃∇〃)ツ うどん、うどん。

あ、話がずれた。元の世界に戻ろう。



「秋田県横手市の地酒を味わう会」、葉石さんの酒物語もそろそろ終わりである。
2時間ばかりの秋田横手の世界。
桜咲き誇る東京で、懐かしき父の存在も感じた、嬉しい幻のひととき。
そんな機会を与えてくれる葉石さんの酒物語の酒語り。
また参加してみよう。

父との再会を期待して……。



 
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DATA)
葉石かおりさん酒語りについては葉石さんオフィシャルブログでご確認ください。
http://ameblo.jp/haishi-kaori/(葉石かおりオフィシャルブログ「美酒らん」

会場情報
店名:和風ダイニング&バー“Fuga(風雅)
住所:新宿区歌舞伎町1-30-1 新宿プリンスホテル 25F
電話:03-3205-1111
営 :11:30~15:00/17:30~翌1:00(L.O.翌0:30) 日祝11:30~15:00/17:30~22:00(L.O.22:30)
休 :無


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